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『座頭市関所破り』 (1964年 大映京都作品)

監督/安田公義
企画・脚本/浅井昭三郎
原作/子母沢寛
撮影/本多省三
音楽/小杉太一郎
美術/加藤茂
出演/勝新太郎、高田美和、滝瑛子、平幹二朗、河野秋武、伊井友三郎、富田仲次郎、千波丈太郎、上田吉二郎
カラー シネマスコープサイズ 84分
 年の瀬も押し迫った真冬のある日。座頭市(勝)は旅の途中で、見知らぬ男から、ある宿場町の旅籠で女中をしている女・お仙(滝)に手紙を渡してほしいと頼まれる。手紙を渡し終えた市は、今度はその旅籠で、行方不明となった父を探して旅をする娘・お咲(高田)と知り合う。
 やがて見えてくるその宿場町の実情……。そこは郡奉行とヤクザの親分・島村の甚平(上田)が結託して、町民から搾取を繰り返す町だった。そして、お咲の父親の失踪にも甚平がからんでいることが明らかになってくる!!
 座頭市シリーズ全盛期の気迫に満ちた傑作である。資料によると、この年(1964年)は座頭市映画が本作品も含めて4本も封切られた年で、本作品はその暮れの12月30日に封切られている。併映は『忍びの者 続・霧隠才蔵』(監督/池広一夫)。
 とにかく、後の時代に語り継がれ、座頭市のイメージとして記憶されるあのスタイルを定着させたのが、この当時の作品群だったことは間違いない。
 例えば、市が仕込み杖をキラリと閃かせ、何事もなかったかのように立ち去った後に、突然、碁盤がパカッと真っ二つに割れるなど、座頭市のあのスタイリッシュなかっこよさが随所に見られ、もうそれだけでワクワクしてしまう。
 また、最初にバラバラに始まった断片的な物語が、やがて1本の線につながっていくという構成も、座頭市映画の醍醐味だ。
 残念だったのは、飲んだくれのジジイ・儀十(伊井)と市の関係の描き方だ。市はこの儀十に自分の父の面影を重ねて見るという部分が物語の重要なキーになっているんだけれど、その設定が何の伏線もなく唐突に出てくるために、いまいち伝わらないのである。ここはもう少していねいに描けば実にいいシーンになったのにと思うと惜しまれる。
 登場人物で注目なのは、市を助けて活躍する角兵衛獅子の少年を演じた二宮秀樹くんである。彼はこの映画の2年後に、手塚治虫原作のテレビ映画『マグマ大使』(1966-1967 フジテレビ系)で、マグマ大使の息子=ロケット人間のガム役を演じて、ぼくらの世代のアイドルとなった少年である。彼はこの映画でも、幼いながら目に力があり実にけなげで愛らしい演技をしてるので見逃がさないように。

(2003/03/05)

「座頭市」シリーズ(全26作)
座頭市物語(1962)
続・座頭市物語(1962)
新・座頭市物語(1963)
座頭市兇状旅(1963)
座頭市喧嘩旅(1963)
座頭市千両首(1964)
座頭市あばれ凧(1964)
座頭市血笑旅(1964)
座頭市関所破り(1964)
座頭市二段斬り(1965)
座頭市逆手斬り(1965)
座頭市地獄旅(1965)
座頭市の歌が聞える(1966)
座頭市海を渡る(1966)
座頭市鉄火旅(1967)
座頭市牢破り(1967)
座頭市血煙り街道(1967)
座頭市果し状(1968)
座頭市喧嘩太鼓(1968)
座頭市と用心棒(1970)
座頭市あばれ火祭り(1970)
新座頭市・破れ!唐人剣(1971)
座頭市御用旅(1972)
新座頭市物語・折れた杖(1972)
新座頭市物語・笠間の血祭り(1973)
座頭市(1989)

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