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『座頭市兇状旅』 (1963年 大映京都)

企画/久保寺生郎
監督/田中徳三
脚本/星川清司
潤色/犬塚稔
原作/子母沢寛
撮影/牧浦地志
音楽/伊福部昭
美術/太田誠一
出演/勝新太郎、高田美和、万里昌代、成田純一郎、小林勝彦、北城寿太郎、名和宏、松居茂美
カラー シネマスコープサイズ 86分
 上州・下仁田へやってきた座頭の市(勝)は、そこで偶然、浪人者の情婦に身を落としていた、かつての恋人・おたね(万里)と再開する。市は、やくざの縄張り争いにからんだ抗争に巻き込まれ、旅籠の娘・のぶ子(高田)を助けて戦う。そんな市の前にたちはだかったのが、今のおたねの恋人である浪人・棚倉蛾十郎(北城)だった。
 ぼくの記憶にある最初に見た「座頭市」シリーズがこの作品だった。前作までの、全編に悲壮感が漂う作風から、市の愛敬ある一面も描くなど、ユーモラスな面にも力を入れ、また活劇シーンも十分に見せるなど、バランスの取れた娯楽活劇に仕上がっている。
 おたねとの再開だけはあまりにも唐突で偶然すぎるが、全体的な人物配置には隙がなく、人の出入りに関しても工夫が随所に凝らされていて楽しめた。
 スタイリッシュで静的な構図の中に、時折、市の表情のアップを適所に挟み込み、市の感情の起伏を手に取るように見せてくれる演出も心憎い。
 因みに、座頭市が仕込み杖を抜いて構えた時の、あの足をガニマタに開き腰を低くしたポーズは、前作まででも見られたが、まだそれは「スタイル」として固定化されたものではなかった。それが「座頭市スタイル」としてはっきりと定着するのは、どうやらこの作品からのようである。

(2001/04/03)

「座頭市」シリーズ(全26作)
座頭市物語(1962)
続・座頭市物語(1962)
新・座頭市物語(1963)
座頭市兇状旅(1963)
座頭市喧嘩旅(1963)
座頭市千両首(1964)
座頭市あばれ凧(1964)
座頭市血笑旅(1964)
座頭市関所破り(1964)
座頭市二段斬り(1965)
座頭市逆手斬り(1965)
座頭市地獄旅(1965)
座頭市の歌が聞える(1966)
座頭市海を渡る(1966)
座頭市鉄火旅(1967)
座頭市牢破り(1967)
座頭市血煙り街道(1967)
座頭市果し状(1968)
座頭市喧嘩太鼓(1968)
座頭市と用心棒(1970)
座頭市あばれ火祭り(1970)
新座頭市・破れ!唐人剣(1971)
座頭市御用旅(1972)
新座頭市物語・折れた杖(1972)
新座頭市物語・笠間の血祭り(1973)
座頭市(1989)

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