Top 柴又名画座 No.175 Back
『素晴らしき哉、人生!』 (1946年 アメリカ作品)

原題/IT'S A WONDERFUL LIFE 製作・監督/フランク・キャプラ
脚本/フランセス・グッドリッチ、アルバート・ハケット
撮影/ジョゼフ・ウォーカー、ジョゼフ・バイロック
音楽/ディミトリ・ティオムキン
出演/ジェームズ・スチュアート、ドナ・リード、ライオネル・バリモア
モノクロ スタンダードサイズ 130分
 少年のころからツキに見放され、人の不幸を背負ってばかりの運命の男ジョージ(ジェームズ)は、ある日、同僚のミスによって会社の金8000ドルを失ってしまう。そしてついに全てに絶望した彼は自殺を考える。しかしそこへ現れたのは、白髪の貧相な老人(ライオネル)であった。老人はジョージに、自分は天使であると告げ、ジョージを救いに来たのだと言う。
 冒頭から3分の2が過ぎるあたりまでは、このジョージの不運な半生が、少年時代からじっくりと描かれる。そして、物語を大きく動かす天使が地上へ降りてくるのは、映画ももうほとんど終わりに近づいたころなのである。
 アメリカ映画には珍しく腰の据わった作品と言うべきだろうか。しかし、それでもキャプラ一流のヒューマンでドラマチックな演出に、のっけから引きこまれてしまう。
 そして天使が現れてからの展開は、もはや片時も目を離すことができないものとなる。
 ここで思い出すのは、この映画の翌年に公開された『三十四丁目の奇蹟』(1947)である。
 クリスマスの日に奇蹟が起こるという空想は、キリスト教文化圏では、ぜひとも信じたい夢なのでしょうね。
 ともすれば偽善的になりそうなプロットを、辛口のスパイスを効かせて見せるシナリオは素晴らしいのひとこと。そして、冒頭から話が本当に動き出すまでの3分の2のお話が、最後の最後で、すべて伏線だったことがわかるところまで、もはやこの映画全体がシナリオの教科書と言えるだろう。
 何だか、昔のハリウッド映画をほめるときには、この言葉がやたら出てくるが、実際にそうなんだからしょうがない。現代のフィクションも、もっと昔のハリウッド映画に学ばなければいけませんね。

(2001/09/07)


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