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高円寺の古書店で、妹尾太郎の絵本を買った!!
(2002/10/04)


教育えほん「あかぐつのねこ」
小学館 幼稚園
昭和31年8月号付録
表1,表4含む全12ページ
 左が高円寺の古書店で買った妹尾太郎の絵本「あかぐつのねこ」だ。ペローの「長靴をはいた猫」をモチーフにしているが、内容はかなりアレンジされている。
 妹尾太郎は、戦前は、妹尾光世という名前でアニメーションを作っており、太平洋戦争末期に、今や伝説となっている日本初の傑作長編フルアニメーション『桃太郎海の神兵』(1945)を監督したことで知られている。
『桃太郎海の神兵』は、戦意高揚を目的とした国策映画として海軍省の出資で製作され、ほとんど終戦間際である4月に公開された。東京は3月10日の東京大空襲ですでに焼け野原となった後である。にもかかわらず、全編にみなぎるリリシズムと、何よりアニメーションとしての動きの素晴らしさには今見てもただただ感動する。当時、高校生だった手塚治虫は、この映画を、焼け跡にポツンと残った大阪の映画館で見て感動し、それが後にアニメーション作家を志すきっかけになったというのは有名な話だ。
 しかし当の監督である妹尾は、戦後は『王様のしっぽ』(1949)という作品(ぼくは未見です)を最後にアニメーションの世界からは足を洗い、それからは絵本を描いて生計を立てながらひっそりと暮らしたという。……というのはアニメ史の本か何かの受け売りである。まして実際に絵本を手にしたのはこれが初めてである。実際にこうして手に取って見ると、表紙の絵を見ても分かる通り、色づかいがきれいなのも目を惹くが、何より主人公「ねこさん」のイキイキとした表情が実に素晴らしい。瞬間をとらえる目というのは、さすがアニメーションの人だと思わせる。
 しかし……やはり『桃太郎〜』の胸踊るような躍動感をこの絵本に期待するのは無理というものだ。この本は、貴重な資料ではあるけれど、本音は、彼のアニメーションをもっともっと見てみたかったですね。


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