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GUNS&ミリタリーおもちゃ箱

第1回:G.I.ジョーの謎?

箱を開けたら大変なことになっていた…

陸軍戦闘服セット。テレビ映画『コンバット』かぶれの少年がみんなこれを買ったため、どれが誰の物かすぐ分からなくなった。
今月から、ミリタリーおもちゃについてあれこれ書くことになりました。よろしく。 さて、ミリタリーおもちゃといえば、最初はやっぱりコレ。そう『G.I.ジョー』である。1964年にアメリカのハスブロ社から発売された身長30センチのアクション・フィギュア G.I.ジョーは、体の21箇所の関節が可動し、自由にポーズを取らせることができる。
関節のゴツさが60年代している。肩と腿の付け根部分は胴体の中のゴムでつながっているのだ。
日本でも翌65年頃から輸入販売されて大流行した。値段は人形本体に服とヘルメット、銃などの小物が付いて1500円。高級玩具だから街のおもちゃ屋に並ぶことなんてほとんどなくて、デパートのショウウィンドウにこれみよがしに並べられているのを眺めるのみだった。
ぼくも、小学生の頃にはほとんど揃えられず、多少財力に余裕のできた中学生になってからデッドストックを見つけて買い足したりしている。
ということで、20年ぶりに押し入れからG.I.ジョーの箱を引っぱり出してみて驚いた。な…なんとプラスチックの部品が溶けて癒着している!!プラ消しゴムをプラ筆入れの中に放置しておくと溶けてくっついてしまうことがある。あれと同じことがぼくのG.I.ジョーの箱の中で進行していたのだ。ああ…!!
だが、さらに箱の中を詳しく調査してみると、プラ部品を溶かした犯人はG・ Iジョーの部品ではなかった。当時、後発として登場した同種のアクション・フィギュア『キャプテンアクション』に使われていた塩ビ系の軟質プラスチック部品が、他のプラ部品を溶かしていたのだ。キャプテンアクションを所有している方は直ちにコレクションを確かめるべし。
中央のベルト状の物が問題のキャプテンアクションのパーツだ。ハンバーガーと弾薬箱を溶着してしまった(涙)。大きな物に被害が及ばなくてよかった。
このキャプテンアクションについてはまた項をあらためて紹介する予定だ。

G.I.ジョーの謎(1)どこが21箇所なのか

ところで、G.I.ジョーにはいくつかの謎がある。まず当時ぼくらの間で激しく議論されていたのが21箇所が自由に動く≠ニ宣伝されている、その21箇所とは「いったいどこをどう数えるのか」ということだった。
これがパンフレットのイラストだ。確かに体の21箇所を指し示しているのだが…。エライ迷惑したんだぞ、ホントに。
これが、どんな数え方をしてもジャスト21箇所にならないのだ。例えば手首で1箇所、肘で2箇所などと数えていくと合計で10数箇所にしかならない。それではと、手首の左右回転と前後動をそれぞれ1箇所というふうに別々にカウントしてみると、こんどは21箇所をオーバーしてしまうのだ。
さらに人形本体に付いていたパンフレットが話をややこしくしていた。イラストにナンバーをふって21箇所の可動箇所を紹介しているのだが、その指し示しているポイントがとんでもなくアイマイなのだ。このパンフレットを前にしてどれだけ悩んだことか…。
今回、20年ぶりに大人の目で数え直し てみたけれど、やっぱり21箇所にはならなかった。まるで不思議の森の木だね。

G.I.ジョーの謎(2)アイテムが増える!?

これがまた不思議。G.I.ジョーを持って友達の家へ遊びにいく。そして帰ってくると、なぜかアイテムが増えたり減ったりしているのだ。特に、ハンドガンや手留弾は小さいので正確な数など自分でも覚えてない。だから時には激しく減っていてショックを受けることもある。
ピストル・手留弾セット(150円)。本来はガバメント1挺にパイナップル6個なのだが、G.I.ジョーの謎(本文参照)のおかげで数が増えている。
そんな時はなるべく近日中に、またその友達の家へ遊びに行くといい。すると帰りには、なくなった手留弾の他に無線電話が1コ増えていたりする…。
実際、G.I.ジョーで友達と遊ぶと、帰る時になって所有権争いが起こるのはしょっちゅうだった。だからぼくは、自分のアイテムには必ず目立たない所に油性マジックでチョイとマークを付けてあった。もしトラブってもそのマークを見ればたちどころに所有者が明らかになる。自分の物は必ず持ち帰る。そして家へ帰ったら、いつの間にか増えしまったアイテムに、所有権を示すマークをチョイチョイと付けていくのである。メデタシメデタシの(?)G.I.ジョーの謎である。

機関銃セット(250円)の、マシンガンと弾薬箱。機関銃はブローニング1919かな。トライポッドのステー部分は金属製で、ハトメ固定した手間のかかった製品だ。

戦争の国から来たおもちゃ

G.I.ジョーのブームから数年後の60年代の終わりから70年代初めにかけて、米軍放出品のブームがあった。 ジャケット、ザック、弾薬箱など、汚れや傷あとも生々しいベトナム帰りの放出品がアメ横に山と積まれ、千円や二千円の捨て値で売られていた。
そこで本物を目にするようになって、ぼくは期せずしてG.I.ジョーのアイテムがいかによくできているかを確かめることができた。銃器や無線機はもちろん、ポーチなどの小物にいたるまで、ディティールに嘘がない。それはG.I.ジョーが徴兵制のある国・アメリカのおもちゃであることを物語っていた。新聞には相変わらず「北爆」などの文字が踊っており、ようやく社会性に目覚めはじめた中学時代。平和とは何かが子供ながらに薄々分かりはじめた時期でもあった…。
さて、次回はG.I.ジョーのパート2として、大物から小物まで、各種アイテムをにぎやかに一挙大公開します。


(「コンバットコミック」'94年2月号掲載)

(c)HASBRO

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