『金星怪獣イーマの襲撃』 (1957年 アメリカ作品)

原題/20 MILLION MILES TO EARTH
製作/チャールズ・H・スクニール
監督/ネイサン・ジュラン
原作/シャルロット・ナイト
脚本/ボブ・ウイリアムズ、クリストファー・ノップ
撮影/アーウィン・リップマン、カルロス・ベンティミッラ
特殊効果/レイ・ハリーハウゼン
美術/ケリー・オデル
主演/ウィリアム・ホッパー、ジョーン・テイラー、フランク・パグリア、ジョン・ザレンバ、トーマス・ブラウン・ヘンリー、チト・ヴオロ
白黒 83分 ※日本劇場未公開
 この映画は日本では劇場未公開なのだが、ここに登場する金星怪獣イーマ(金星竜イーマ)は、ぼくらの世代にとっては非常に知名度が高い。というのは、まだひとりで映画館にも行けない小学校低学年のころから、かの大伴昌司が少年誌の特集記事や大図解で繰り返し紹介していたからだ。
 というわけで、ぼくもよく知っている金星竜イーマだが、映画の方は今回初めて見た(もしかしたら子供のころにテレビ放送したものを見てる可能性はあるが、まったく覚えてない)。
 劇場未公開ということでB級作品を予想していたのだが、実際には技術的にも内容的にも実にしっかりとした作りの見事な怪獣映画だった。
 イタリア・シチリア島の漁村近くに、金星から帰還したアメリカのロケットが不時着する。生存者は、隊長であった大佐(ボブ)ただひとり。そしてロケットが金星から持ち帰った金星生物の卵が孵化し、中から金星竜イーマが姿を現わした。最初は手の平に乗るほどの大きさだったイーマはみるみる巨大化し、人間に追いまくられて凶暴化、ローマの街で大暴れする!!
 個々の人間の描写は大味だが、前半は「市民の安全のために怪獣を殺すべし」と主張するシチリアの警察署長と、なんとしても生け捕りにしたい米軍との捕獲競争や、後半は、ローマの遺跡を舞台とした怪獣対人間の攻防など、見どころも充分で盛りだくさんな構成になっている。
 次第に巨大化するという設定のため、前半は等身大の怪物との戦いでサスペンスタッチの演出がなされ、後半になると巨大怪獣対軍隊のスペクタクルに、とていねいに描き分けられているところもいい。
 さらに昨日柴又名画座で上映した『原子怪獣現わる』よりも4年後の作品ということで、レイ・ハリーハウゼンの人形アニメーション技術も格段に進歩している。犬や人間、さらには象と格闘したり、羊の群れを追いかけたりと、スクリーンプロセスやミニチュア、合成を駆使して、後にダイナメーションとして結実するテクニックの原型が随所に見られる。
 ところで映画の字幕には、タイトルの“イーマ”という名前はひとことも出てこない。実はこの名前は、大伴昌司が大図解で勝手に命名したものだったのだ。

 ※後記:後日、WOWOW のプログラムガイドを見たら、この映画は日本ではこれまでテレビ放映もされていなかったそうで、今回 1999/08/17 の WOWOW の放送が本邦初公開だったんだそうだ。なんでこんな傑作をこれまで公開してなかったんだろう。もったいないことです。



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