『我輩はカモである』 (1933年 アメリカ作品)

原題/DUCK SOUP
監督/レオ・マッケリー
脚本/バート・カルマー、ハリー・ルビー
撮影/ヘンリー・シャープ
主演/グルーチョ・マルクス、チコ・マルクス、ハーポ・マルクス、ゼッポ・マルクス、マーガレット・デュモント
白黒 70分
 マルクス兄弟のパラマウント時代の最後の作品。末弟ゼッポが参加した最後の作品でもある。戦争の影が忍び寄る時代背景を舞台として、ラディカルなコメディの中に痛烈な戦争批判を込めている。
 柴又名画座では、6月に、マルクス兄弟がパラマウントからMGMへ移籍して3作目の作品 『マルクス兄弟 珍サーカス』(1939) を上映したが、この映画のギャグ・パワーはそれの比ではない。
『我輩はカモである』には、初めて見たときにはもーお腹がよじれるほど笑わされたのだ。映画の印象は見るときの気分に大きく左右されてしまうから、今日はそれほど笑えなくて残念だったけどね。
 しかしそれでもハーポがポケットから巨大な裁ちバサミを取り出して、何でも切ってしまうギャグには大爆笑。グルーチョ演じる大統領が、うっかり背中を見せればタキシードの裾をチョンと切っちゃうし、レモネード屋のポケットは裏返しにしてチョン、羽根ペンの羽根もチョン、兵隊さんの鉄かぶとの立派な飾りもチョン、チョン、チョン!! もーたまりません。
 ところでこの『我輩はカモである』は、今でこそどの本を読んでも、マルクス兄弟の最高傑作と書かれているが、公開当時は不評と不入りで打ち切られたそうで、マルクス兄弟はこの映画の1年後にMGMへ移籍することになる。
 小林信彦が『世界の喜劇人』(新潮文庫)の中で、『我輩はカモである』の詳細な作品分析を行っているが、いまパラパラと読んでみたら、その中で『我輩はカモである』のことを “マルクス兄弟の挫折の記念碑” と形容していた。

(1999/08/11)


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