『夕陽の丘』 (1964年 日活作品)

監督/松尾昭典
脚本/山崎巌、國弘威雄
原作/菊村到
撮影/萩原泉
音楽/池田正義
美術/木村威夫
出演/石原裕次郎、浅丘ルリ子、中谷一郎、和田浩治、名古屋章、野呂圭介、深江章喜
カラー シネマスコープサイズ 88分
 日活アクションの中で、メロドラマが話の中心となっている作品群を、一般に日活“ムードアクション”と呼び、これはその中でも代表的な作品だ。ある資料によればこの作品からムードアクションという呼び方が定着したという。
 このムードアクションは裕次郎作品に多くて、愛に生きるメロメロの女の甘さと男の頽廃的で孤独なムードがイカシているわけだけど、実はぼくはそうした甘々なムードアクションよりも、宍戸錠が出てきてキザッたらしいセリフをつぶやいたりするスタイリッシュなアクション中心の作品の方が好きなんだけどね。
 この『夕陽の丘』の最大の見どころは、ひとりのヤクザを同時に愛してしまう姉と妹の二役を、浅丘ルリ子が演じ分けているところだ。
 驚いたのは、姉のことを語る妹の横顔に、姉の横顔の映像をオーバーラップでダブらせて見せるシーンだ。ある人物の顔に別の人物の顔をダブらせるという表現はよくあるが、この映画の場合は一人二役ですからね。同じ人物の顔をオーバーラップさせても同じだと思うのだが、これがどうして、それらしく姉と妹に見えるのは演出の力か、メイクの力か、はたまた浅丘ルリ子の演技力のせいなのか。
 青函連絡船の船着き場で、恋人の到着を待つ裕次郎が「これが最後の船だ」とつぶやいたり、ホテルのフロントで「すぐに発つぜ。最終の船には間に合うかい?」「最終はもう出ちまったよ。明日の朝だね」みたいなやりとりがあったりして、随所で北海道の最果て感が味わえるのも、今となっては貴重である。

(1999/07/27)


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