『恐怖の報酬』 (1952年フランス作品)

原題/LE SALAIRE DE LA PEUR
監督・脚本/アンリ・ジョルジュ・クルーゾー
原作/ジョルジュ・オルノー
主演/イブ・モンタン、シャルル・バネル、ペーター・ファン・アイク、フォルコ・ルリ
白黒 149分
 本国のフランスで食い詰めて、南米の田舎町に流れてきた男たち。彼らがそこから逃げ出すには金が必要だった。そんなある日、そこから500キロ離れた油田で火災が発生した。男たちに、その火災を爆風で吹き消すために必要なニトログリセリンを、トラックで運ぶ命がけの仕事が持ち込まれる。成功報酬はひとり2000フラン。2台のトラックに分乗した4人の男たちの命がけのドラマが始まる。
 大学時代に新宿のアートビレッジというミニシアターで、16mmフィルムで見て以来、久々の再見だ。その時にも手に汗を握ったけれど、今回もまったく同じ。1つのサスペンスを2重3重に盛り上げる工夫が凝らされていて、本当に息つくヒマもない。勉強になるなぁ。
 しかもこの恐怖のドライブに出発するまでの町の描写にもたっぷりと時間をかけ、そこで男たちの人間性をじっくりと描写している。出発するまでは大口をたたいていた男がいざとなるといちばん小心者だったりして、恐怖に直面したときに4人それぞれの本性がむきだしになる皮肉たっぷりの描き方は、まさにフランス映画の味わいだ。
 カメラワークやカット割りも的確で、無駄なカットが1つとしてない。特にクローズアップの効果的な挿入方法は、映画関係者はぜひ分析してみるべきでしょうね。
 ただ、トラックが巨体を揺すって山道を走る冒険映画には、スタンダードサイズは窮屈すぎる。こういう作品こそシネマスコープが似合います。
 しかし、さらに反語を重ねると、その期待通り、1977年にカラーシネマスコープサイズでリメイクされた『恐怖の報酬』(監督/ウイリアム・フリードキン、主演/ロイ・シャイダー)は、特撮こそ迫力倍増していたものの、ストーリーとキャラクター設定で、このオリジナルに完全に負けておりました。


ルイージ(左)と、マリオ
 ところで今回初めて気がついたんだけど、この映画でイブ・モンタン演じる主人公の名前がマリオで、もう1台のトラックに乗る男の名前がルイージなんですよ。もしかしたらあの有名TVゲームのキャラクターの名前って、ここから拝借したのかも。ルイージなんて、体格も帽子もヒゲもそっくりでしょ。

(1999/06/17)


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