Top 柴又名画座 No.170 Back
『U-571』 (2000年 アメリカ作品)

原題/U-571
監督/ジョナサン・モストウ
製作/ディノ・デ・ラウレンティス
製作総指揮/ハル・リーバーマン
原案/ジョナサン・モストウ
脚本/ジョナサン・モストウ、サム・モンゴメリー、デヴィッド・エアー
撮影/オリヴァー・ウッド
音楽/リチャード・マーヴィン
出演/マシュー・マコノヒー、ビル・パクストン、ハーヴェイ・カイテル、ジョン・ボン・ジョヴィ、デヴィッド・キース、トーマス・クレッチマン、ジェイク・ウェバー
カラー ビスタビジョンサイズ 116分
 柴又名画座では、ちょうど1年前の夏に、潜水艦映画の傑作『眼下の敵』を公開している。狙ってそうしたわけではないが、夏に海洋物の映画を見るのは涼を呼ぶということで、それだけで楽しいですね。昔は、夏になると必ずイマイの「サブマリン707」や「青の6号」などの潜水艦プラモを作って遊んでいたことを思い出します。
 さて、この映画は第二次世界大戦中の1942年4月が舞台である。連合軍は、ドイツ軍の潜水艦UボートU-571が故障して洋上を漂流しているという情報をキャッチする。イギリス軍の旧式潜水艦S-33は、そのUボートからドイツ軍の暗号解読機“エニグマ”を奪取する密命を受けた。そして見事にU-571の乗っ取りに成功したものの、ドイツ軍の奇襲に遭い、自艦を沈められ、故障した敵艦で敵地を逃げ回らなければならなくなってしまった。
 次々と彼らを襲う絶体絶命のピンチの数々はそれなりに楽しめるものの、それぞれのエピソードやストーリーは実にオーソドックスで、むしろ古臭いほどのハリウッドスタンダードなお話である。
 まあ、それだけに安心して見られるし、それなりに楽しめたんだけど、見どころが最新技術による潜水艦対駆逐艦の戦いの描写だけというのもいささか寂しい。話題の大作でもあるし、旧来の潜水艦映画の名作を超える“何か”を期待していたのだが、残念ながらそれは期待外れに終わってしまった。
 1981年、統一前の西ドイツで製作されたウォルフガング・ペーターゼン監督の『Uボート』を見たときには、それまでのハリウッド映画では描かれなかった潜水艦内の閉塞感や、乗組員たちの生活が生々しく描かれていて新鮮な驚きを感じた。
 その後も『レッド・オクトーバーを追え!』(1990)など潜水艦映画の凡作はあったが、やはり、今Uボートの映画を作るならば、『Uボート』の水準は超えて欲しかった気がする。
 人間ドラマの面でも、ドイツ軍を一方的に悪役にする演出は今では通用しにくいのではないだろうか。ただ、実戦経験のない若い副長(マコノヒー)が、次々と決断を迫られる中で成長していく過程をていねいに描いていたのは好感が持てた。

(2001/08/23)


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