Top 柴又名画座 No.136 Back
『旅の重さ』 (1972年 松竹作品)

製作/上村務
監督/斎藤耕一
原作/素九鬼子
脚本/石森史郎
撮影/坂本典隆
美術/芳野尹孝
音楽/吉田拓郎
出演/高橋洋子、高橋悦史、三國連太郎、岸田今日子、横山リエ、砂塚秀夫
カラー シネマスコープサイズ 90分
 孤独なひとり旅をする少女の心模様を綴った同名小説の映画化。大学時代に初めて映画館で見て、その後、原作小説も読んだのだが、どちらも素晴らしい。父親を知らない少女が、父親の幻影を求めて、家出をし、四国でお遍路さんの旅路を辿る。そこで出逢う人々に対して少女は、時にぬくもりを求め、時にうとましさを感じて逃げ出す。そんな彼女の揺れる心がビビッドに伝わってくる、全編が宝石のように美しい映画である。
 元日活の映画スティルカメラマンだった斎藤耕一は、映像美にこだわる監督だが、この作品は、特に、構図、色彩、そして光と影の演出が見事。特に動的で映画的な構図と、写真集のヒトコマのような静的な構図との融合には舌を巻くほかない。
 また、石森史郎の描く、少女のモノローグも見事だし、後半、ほんのちょっとだけ出演している秋吉久美子の寂しさをたたえた口数の少ない娘の役も素晴らしい。
 初見以来、名画座で数度、さらにレンタルビデオで借りて幾度となく見ているのだが、かつてビデオ販売されたものはトリミング版だったので、ノートリミングのシネマスコープサイズで見るのは実に10数年振りということになる。この映画をトリミング版で見てはやっぱりだめでしょう。

(2000/06/18)


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