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2008年6月10日

原稿紛失の話

 このところ、「週刊少年サンデー」で連載されていたマンガ家さんが、編集部に原稿をなくされて、その件で訴訟問題になっているみたいですね。
 ぼくはそのマンガ家さんも担当編集さんも面識がないので、ここで勝手なことは何も言えないのですが、編集部で原稿を紛失してしまうというのは、ぼくが見知っているだけでも過去に何度かあるんですよ。

 ぼくは最近は、それほど多くのマンガ編集部に出入りしているわけではないので、以下は「サンデー」や「小学館」の話ではなく、一般的なマンガ編集部の話でかつ10数年前の話としてお読みいただきたいのですが……、
 ぼくがかつて出入りしていたころのマンガ誌の編集部では、連載作品で人気もあって単行本化が確実な作品は、決まったロッカーに入れてキチッと保管されていましたが、それ以外の、例えば読み切り作品の原稿とか、新人の原稿に関してはかなりルーズでした。
 例えば担当編集が自分の机の近くに封筒にいれて無造作に置いておいたり、個人用のロッカーの中にしまってあったりする場合も多かったと思います。それで、ある程度まとまったら作家さんに返却するという感じでした。
 しかしその編集者が異動で別の編集部に移ることになり、社内で引越しをしたりすると、そこでもう分からなくなるわけです。その時点できちんと各作家さんにあいさつ回りをして原稿も返却するという人ももちろんいますが、人によっては、次の担当編集者に預けて「返しといて」で済ます人もいるわけです。また、誰が確認するわけでもないので、そのまま次の編集部に持っていってしまう人もいたのではないかと思います。
 だったら、印刷所から戻ってきた原稿は、すぐ作家さんに返却するようにルールを決めたらいいのではないかというと、なかなかそうもいかない事情もあるんです。それは、もしかしたら急に単行本になるという話が出るかも知れないし、予告ページなどでカットとして流用する可能性もあったりするからです。で、「とりあえず預かっておく」という状態になるわけですね。
 また、マンガ家さんの側も、1回ごとに返されても管理が面倒なので、まとめて返してもらった方がありがたい、という人もいるし、自分から「返してくれ」と言うのは、何だか編集を信用していないように思われるのではないかと気を使うマンガ家さんもいて、なかなか「すぐに返してくれ」とは言わないし、言いにくいという雰囲気があるのですね。

 それともうひとつの原稿がなくなる要因は、どこかの書店でフェアを開催するときに、マンガ家さんの「原画展」を開くことがあるんですよ。これを仕切るのは営業の部署なので、営業の担当者から編集部に「原稿を貸してほしい」という依頼が来るわけです。それで担当が原稿を出して営業に貸し出すわけですが、そこで返却があいまいになって紛失してしまうことがあるのです。
 ある出版社で、実際にこの原画展終了後に原稿をなくされたマンガ家さんがおりました。
 今回、なくなった原稿というのがカラーページが数ページらしいので、ぼくの推測では、この「原画展」のような貸し出しがあったのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

 そして、ぼくの知っている最大の原稿紛失は、あるマンガ家さんがある青年誌に読み切りを数回掲載したのですが、その数回分の原稿をそっくり丸ごとなくされてしまったというものでした。
 そのマンガ家さんは、他の出版社からそのマンガを単行本にして出すことになったのですが、どうしても原稿が見つからず、最終的に、印刷会社に保管してあった製版フィルムから高性能コピーのような技術で複製原画を作ってもらい、それを原稿にして何とか単行本を出したのでした。
 確かにそれで、黙っていたらほとんど分からない程度にきれいに復元されましたが、やはり細部を良く見ると、ペンのヌキの部分のタッチとかはまったく失われていましたし、網掛けの部分がつぶれている部分もあって、非常に残念な感じでした。
 けれども、そのマンガ家さんは温厚な方だったので、賠償金などという話にもならず、この件はこれで終わってしまったようです。いや、実際はお腹の中ではかなり怒っておられたんだと思いますが、その編集者には世話にもなっているという思いもあるし、ゴネてもしょうがないというあきらめの気持ちもあって、大人の対応をしたというのが本当のところかも知れません。

 ところで、ぼく自身は、編集者の立場で原稿をなくしたことはありませんが、拳銃王でライターの小峯隆生氏から大切な写真をお借りしてそのまま返却せず、10年後に返したという経験があります。
 小峯氏とは、さらにその数年後にまた一緒に仕事をする機会を得たのですが、その時は、会う人ごとに「こいつは俺の写真を10年間返さなかったんだ」としばらく言われ続けました(大汗)。

投稿者 黒沢哲哉 : 2008年6月10日 01:42

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コメント

お久しぶりです。

今回の件は、ボクもちょっとドキドキしながら見守っています。

今後は、仕事をするまんが家さんと編集部の間で、「暗黙の了解」をなくし、きっちり書面で契約をする。
受け取った原画は、すぐにフィルムまたはデータ化し、それを版下として使用し、原稿は即時返却する。

この2点を徹底すれば、今回のような事態は避けられるんじゃないですかねえ。

ムックとかを作った後に、印刷所から戻ってくる原稿袋を、入念にチェックしないと、そこに結構捨てカットとして、原稿が潜んでることがあるんですよね(苦笑)。

ウチにある原稿袋にも、某有名作家の原画が入っていたことがあります。

投稿者 いいずか : 2008年6月10日 13:25

ご無沙汰いたしております。
原稿って、そういう風に扱われるものだったのですか。(^^;
今ですらなくなるんだから、昔(トキワ荘時代とか)だと、もった曖昧だったのかしらん?
それとも逆に、編集者と漫画家さんの信義が厚くて、そういうことはなかったのかしらん?
気になりますネー。

オバQとかおそ松くんとか、けっこうそのままの復刻があったので、きっと大丈夫だったんでしょうけども。

投稿者 おなら出ちゃっ太 : 2008年6月10日 13:26

以前、弟も某クルマ雑誌の表紙のイラスト描いてた時に、手描き原稿だったので「返してね!」と言ってたのに結局返してくれなくて、その後はパソコンで描いたデータを渡すか、出力センターで出力したヤツを渡してました。

投稿者 misutake : 2008年6月10日 16:59

僕も小学館、少年画報社の担当にやられた経験者です。
今回のガッシュの先生の一番最初の担当編集者H氏は黒澤先生、多分ご存知ですよ。
僕もH氏に3枚ほど無くされました。
単行本収録の関係で3枚ほど詰めて構成しなおしたところ、その3枚が丸々行方不明。
H氏は電話で連絡してきました。お詫びに顔出すくらいしてもいいのに。
講談社でも似たような経験あります。この原稿は幸い数年後に見つかりました。
向こうの担当者の返却ミスでした。
今回のような事は表にこそ出にくかったですが、これまでにも数多く起こっていたことだと思います。これからはデータ保存が当たり前になるでしょうから紛失なんてことは少なくなるとは思いますが、編集者自身の資質も問われている事は間違いないです。
口の利き方を知らない、謝り方を知らない編集者ではどんな温厚な先生でも腹立ちますからねー。
残念ながら出版社の大小に関わらず「紛失」はありますね…。

投稿者 遠山 光 : 2008年6月10日 22:34

>いいずかさん
某所のいいずかさんの書き込みも読ませていただきました。
いいずかさんのおっしゃるように、このトラブルは、原稿紛失
だけでなくて、編集者の心構えの問題や、創作に関わってい
るという自覚の薄さ、また作品を取り扱うシステムそのものの
あり方など、多くの根の深いものを内包してますね。
他にも、仕事を依頼する時点で原稿料を明確にしない慣習
(最近はそうでないところもけっこうありますが)とか、出版界
にも、相撲界と同じように古い体質が悪弊として残ってしまっ
ているんでしょうね。

>おなら出ちゃっ太さん
それが昔はもっとルーズだったらしくて、使い終わった原稿は
不要なもの、という認識のところも多かったそうですよ。
貸本マンガ雑誌では、読者が出版社にファンレターや似顔絵
を送って採用されると、マンガの生原稿を細かく切ったコマを
送ってくれたそうです。以前に、あだち充先生の取材をした
時に、あだち先生が、昔、貸本マンガに投稿してもらったもの
だという、ありかわ栄一とか、さいとうたかをとかの原画のコマ
切れを大量に持っているのを見せていただきました。

ですから、当時の原稿は逆にほとんど作家さんの手元には
ないそうです。
最近の復刻版は、出版物から復元して原稿にしていまして
そういう技術が進歩したから可能になったことなんですね。
30年ほど前に、青林堂から手塚治虫の昭和20年代の作品
が復刻されたときは、出版物を質の悪いコピー機でコピーし
て、その汚れを編集者たちが必死でホワイトとペンで修正し
ていました。

>misutakeさん
おお、misutakeさんの弟さんも被害に遭われていましたか。
ぼくの場合は、「これ1つしかないので絶対に返してください
ね」と言った資料が返ってこなかったことが何度もありますね。
最近は、原稿はほとんどの場合、デジタルデータとして持って
おけますから、心配が少なくなりましたね。
表紙の原画などは、預かる編集者の方もプレッシャーがかなり
あるんですよ。作家さんのところへ行って、ひと抱えもある巨大
なイラストボードをお預かりすると、帰りに本屋に寄り道とかもで
きず編集部へまっすぐ戻っておりました。

>遠山 光さん
そして、遠山先生もですか!?
ぼくが知っている限りでも、かなり高名な作家さんの原稿も
なくなっていますので、編集がその作家を軽く見てて、扱い
がテキトーになっているとか、そういう問題ではなくて、もっ
と根本的な問題がありそうですね。

H氏は彼が新入社員のころに読者ページの担当としてしば
らく一緒にお仕事をしました。彼がまだ新人のころで、その
後の評価は伝聞でしかうかがっておりませんので無責任な
コメントはできませんが。

それにしても、キャリアの長いマンガ家さんに片っ端から聞い
ていくと、皆さん一度や二度はありそうですね。恐くて聞けな
かったりして(^_^;)

投稿者 黒沢哲哉 : 2008年6月10日 23:37

マンガ雑誌の編集部員が主人公という4コマ漫画で、原稿を無くす、折り曲げる、汚す、椅子で轢く、服のポケットに入れる、そのまま洗濯する、寒いときに服の下に入れるなどのギャグありましたが。
笑えない人もいたのですねー。

考えてみれば、子どもの頃は、マンガ家の原稿って会社(出版社、子どもだから分からなかった)が買い取るのかと思ってましたーー。

投稿者 おなら出ちゃっ太 : 2008年6月13日 17:18

>おなら出ちゃっ太 さん
そんなマンガがあったんですね。その編集者こそ、その原稿を汚したりしたらシャレにならないので緊張したでしょうね。
「こち亀」で、両さんが編集者になってマンガ家のところへ行ったら、締め切り過ぎてるのに原稿が3ページしかできてなくてマンガ家が蒸発してて、仕方なくその3ページを拡大コピーしたり左右反転したりして何とか24ページに引き伸ばそうとするって話があって、笑いましたが、業界人としてはある意味笑えない話でもありました。

それと、買い取りの話で思い出しましたが、
ぼくも、学生時代に、いろいろマンガとか映画とか投稿すればよかったのですが、各種コンテストの要綱には「受賞した作品の著作権は出版社に帰属します」という一文が必ずあって、「きっと原稿は返してくれないんだ。ぼくの作品なのに受賞したら他人に権利もろとも奪われてしまうんだ」と思って投稿しませんでした。
唯一「ぴあ」の自主映画祭に応募したのは、それには「作品の著作権は~」の一文がなかったからです。

投稿者 黒沢哲哉 : 2008年6月14日 00:25

一冊だけ出した本の最終原稿を返却して貰っていないような気がします。
最初の原稿はフロッピーで提出をしていて、それは返却をして貰っていますが。
たった一冊本を出しただけで、私は色々な疑問とぶつかってしまいました。

私は新聞や雑誌の投稿の趣味があり何度も投稿採用経験がありますが、その時の原稿や、小説やエッセー等に応募(応募はすべて没)した時の原稿は返却をして貰えませんね。著作権等を考えると返却してくれないとおかしいような気がします・・・。

投稿者 ブルーベリー : 2008年6月16日 23:54

>ブルーベリーさん
原稿って、手書きのですか? だったら返却して欲しいですよねー。
しかし文章の原稿は、マンガ原作の場合は、まだ手書きだった当時も返却はしてもらいませんでしたね~。返してと言えば返してくれたのか分かりませんが、そういう習慣なんだと思ってました。
ですので、渡す前に自分で必ずコピーを取るようにしていたんですが、喫茶店で仕上げてその場で渡す、なんていうシチュエーションだとコピーが取れなくて、原作が手元にないものもありますね。

投稿者 黒沢哲哉 : 2008年6月18日 02:14

パソコンで作った原稿をプリントアウトした原稿です。

新聞等に投稿をし始めた頃の投稿文は残していないものがありますが、私はほとんどプリントアウトしたメール投稿なので手元に投稿文はほとんど残っています。掲載された新聞雑誌はすべて残してありますし。

プロの方の原稿が返却されない話にはとてもビックリしました。

投稿者 ブルーベリー : 2008年6月22日 11:53

>ブルーベリーさん
いつもながら超遅レスでごめんなさいm(__)m。
プリントアウトしたものはほとんど返してくれません。
しかしそこらにポイと投げ捨てられてたらヤだなぁ(^_^;)。

投稿者 黒沢哲哉 : 2008年7月10日 01:09

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