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2005年4月15日

手塚治虫の幻の2作品が完全復刻


復刻版 手塚治虫のディズニー漫画 バンビ ピノキオ 手塚治虫の、恐らく市販書籍としては永遠に復刻されないだろうと思われていた幻の2作品がいきなり講談社から復刻版で出版された!! その2作品とは、『バンビ』(昭和26年、鶴書房)と『ピノキオ』(昭和27年、東光堂)である。
 この2作品が今までなぜ復刻不可能だったのかというと、手塚ファンの間では知られた話なんだけど、この2作品は同名のディズニーの映画を下敷きとしたマンガだからなんである。
 戦後から昭和40年代の初めごろまでは、日本も東南アジアや中国のようにコピー天国だった。そんな時代に正当な許諾を得たとは思えない状況で出版されたこの2作品の復刻にディズニーが許可を出すなんてまず考えられなかったからだ。何しろディズニーは著作権に関して世界一厳しい会社なのである。かつてはあのアカデミー賞授賞式にまでクレームをつけたこともあるのだ(確か、プレゼンターの女性が無許可でシンデレラのコスプレをしていたことに厳しく抗議したというものだった)。

バンビ.jpgピノキオ
©Disney
Original Comics Illustrated
by Tezuka Osamu.

 そして実際に、手塚治虫の『ピノキオ』は、昭和50年ごろに一度、青林堂から限定版として復刻されることが決定し、編集作業にまで入っていたんだけど、その後、この権利関係の問題から急きょ出版が中止されたことがあったのだ。
 それからはもう完璧に幻の作品となってしまったわけで、その後、マニア向けの限定版で手塚マンガが次々と復刻されたときも、講談社から全集が刊行されたときも、この2作品だけは刊行されなかったのである。
 だから古書店での価値は手塚治虫の旧作の中でもとりわけ高く、本の状態によっては30万円以上という高値がついていた。
 また、そんなこの2冊の価値に目をつけた業者かマニアか知らないケド、無許可の海賊復刻版までが地下で出版され、数年前に神保町の古書店で、1冊4万円で2冊並んでガラスケースに飾られているのも見たこともある。
 それが今回、装丁や表紙裏のデザイン、奥付け、カラーや2色刷りのページまでが完全復刻されて、2冊セットで発売されたんだから、これはもう買うしかないでしょう!!
 そして、読みましたよ。涙ナミダで。何しろ、マンガで大ヒットを飛ばして印税がガッポリと入ったら思い切って買うしか読む手立てはないと思っていた作品なんですからね。

 でもって、夢にまで見た2作品を読んだ感想はというと......。

 まず『バンビ』。こちらは、手塚治虫がエッセイの中で、映画館に通い詰めて80回以上も見たと語っていた作品だけに、その思い入れの強さがひしひしと伝わってくる作品だった。
 特に動きの表現に関するこだわりがものすごく、何とかして読者にディズニーアニメーションの動きの素晴らしさを伝えようとしている様子が実に良く分かる。
 また、憧れのディズニーをコピーした習作とも言える作品であることが特に貴重で、手塚がディズニーのアニメーションから何を学び、どのような影響を受けたのかがナマの形で見られたことが実に興味深い。今後、手塚作品を語る際には欠かせないテキストとなるだろうことは間違いない。

 そして『ピノキオ』。こちらは『バンビ』よりもドラマ性が増し、さらにディティールの表現などにも手塚色が強く出ていることで、原本のディズニーアニメのイメージを読者に伝えたいという意図よりも、手塚が自身の中で消化したディズニー論を語っているといった方がいいだろう。
 手塚はこれらと同じころにドストエフスキーの『罪と罰』も漫画化しているが、それも全く同じで、原本の中から手塚治虫が新たに見出したオリジナルのテーマをマンガとして展開していると言い換えてもいいだろう。

 そして何より、このほぼ同時期に同じディズニーアニメーションを原本として作られた2作品に、そうした大きな違いがあったことが分かっただけでもこれを読んだ価値があったと言える。

 なんかどれも言い方が抽象的で申し訳ないけど、まだ読まれていない方が多い現状で具体的な内容についてあまり触れたくないので、興味を持たれた方はぜひ読んでいただきたいと思う。
 それと今回の奇跡の復刻版出版は、手塚治虫漫画全集を完結させ、長年ディズニーとの深い関係にある講談社だからこそ可能になった、いわば超法規的措置だったのだと思う。
 30年来の手塚ファンとしては、今回の出版の話を聞いたとき、手塚治虫漫画全集発刊のニュースを知ったとき以来の大コーフンでありました。とにかく講談社には感謝してもしきれない。ネットワーカーっぽく書くと「講談社乙、GJ!!」 といったところだろうか(笑)。

 あ、それからもうひとつ、まだ復刻されていない当時の単行本で、手塚治虫の『キングコング』(昭和22年、不二書房)っていうのもあるんですけど、これも超法規的措置で何とかならないもんでしょうか。

投稿者 黒沢哲哉 : 2005年4月15日 02:30

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