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GUNS&ミリタリーおもちゃ箱

第3回:鉄砲は子供のパスポート!!

銃でもピストルでもなく「鉄砲」!?



巻き玉鉄砲のスタンダード、通称・キングコルト。リボルバーとオートマチックをミックスしたデザインは当時の玩具鉄砲ではポピュラーなものだった。全長121mm。


ハンマーを起こすと平玉を6発装填した鋳物製シリンダーが水平に回転する。



かつては銀色に輝いていたタイガー巻き玉鉄砲。玩具銃にはなぜか中折れ式が少なくない。

 前回、前々回とG.I.ジョーなんて高級玩具を紹介してミエをはってしまったけど、昭和30年代当時、ぼくら下町少年にとってホントに身近かだったのは、駄菓子屋で売られている20〜30円のインチキキャラクターおもちゃやベニヤ製グライダーなど、チープな玩具たちだった。

全長 178mmのGIANT。昭和30年代後期で50円前後だった。内部メカはキングコルトと同一だ。
 そんな駄菓子屋玩具を代表するアイテムがブリキの鉄砲である。その外観は子供が見てもいかにも安っぽく、かろうじて拳銃のかたちをとどめているにすぎない。それら駄菓子屋鉄砲を、ぼくらは拳銃でもピストルでもなく、親しみをこめて「鉄砲」と呼んでいた。
 オートマチックとリボルバーがゴッチャになったデザイン。買った当初は調子がいいものの、数日たつとたちまち錆びて動かなくなってしまうメカ。
けれどもそのブリキ鉄砲のはかなさには不思議な愛着が湧き、壊れては飽きもせずに買いなおしていたのだ。

駄菓子屋ブリキ鉄砲の2大ブランド「タイガー」と「キング」のロゴマーク。他にも無数のメーカーの名もない鉄砲が現われては消えていった。
 値段は、ぼくがブリキ鉄砲をよく買っていた昭和30年代後半。最もスタンダードだったタイプの、キングコルトとか100連発とか呼ばれた巻き玉鉄砲が30円くらい。機構部分はまったく同一でやや大きいジャイアントコルトが50円くらいだったと思う。
 1個1円の飴玉からバラ売りしていた駄菓子屋で50円はかなり高価な部類に入るものだった。火薬は、平玉が1枚2円。巻き玉が1個1円くらいだったろうか。
 ぼくがこれらのブリキ鉄砲で遊び始めた昭和30年代当時には、すでに巻き玉鉄砲と平玉鉄砲が両方店頭にならんでいた。しかし昭和20年代生まれの人に聴くと、その少し前までは単発の平玉鉄砲が主流で、巻き玉を使った連発式の登場はかなりエポックメーキングなことだったという。それは、連射できる快感はもちろん、火薬を装填したまま携帯できるというメリットも持っていた。


SAAモドキの単発銃。火薬皿に穴があるこのタイプは機関部がすぐに錆びる。全長150mm。メーカー名「FUJI」?
 平玉鉄砲は、5センチ×10センチくらいのシート状になった平玉火薬をミシン目から1発ずつ切り離し、ハンマーを起こした鉄砲に装填して撃つもの。本物のオートマチック拳銃ならば、チャンバーに弾丸をセットしてハンマーが起きた状態ということになる。もちろんセーフティなどないから暴発の可能性もある。
 対する巻き玉鉄砲は、幅5ミリ程の帯状の紙の上に1ミリ位の火薬の粒が適当な間隔を置いて並んでいる。それをカメラのフィルムのように鉄砲にセットする。あとは引き金を引けば火薬紙が自動的に繰り出され、ハンマーが火薬を叩いていくのだ。これは本物で言えばダブルアクションリボルバーのようなもので、トリガーを引かなければハンマーは常にリリースされた状態となっている。パーツ数はピンなどをすべて数えてもわずか16点。モナカ状に左右別パーツになっているフレームは歪んでまともに噛みあってすらいないにもかかわらず、作動は実に快調だった。ただし買った当日だけは…。

連射の快感はフトコロと相談



大阪の山本火工と東陽煙火製の鬼印平玉&巻き玉。小箱に入ったのは昭和40年代以降で、それ以前はバラ売りだった。
 子供が鉄砲ゴッコをして遊ぶ時には、大きく分けて2種類の「気分」がある。1つは映画やテレビ、まんがの主人公を気取って、皆がイメージの中で映画やテレビの主人公を気取って遊ぶ、いわゆるゴッコ遊び。もう一つは実際にタマの出る銀玉鉄砲などで、的を撃ったりルールを決めて戦ったりして遊ぶゲーム遊び。前者をムード派、後者をアクション派と言い換えることもできる(オイオイ)。
 これは今のエアーソフトガン派とモデルガン派と全く同じ。男なんていつまでたっても男の子なんだよね。
 その日の気分によってどちらの遊びをするか変わることはあったが、その両派は混在しないという暗黙のルールがあった。火薬鉄砲で遊ぶときに1人だけタマの出る銀玉鉄砲を持ってくる奴がいればヒンシュクもので、火薬の鉄砲を持ってない場合は銀玉を抜いて空撃ちをしなければ仲間には入れなかったのだ。

昭和50年代キング製のプラスチック巻き玉ワルサーPP。機構は昭和20年代製と全く同じ!銃種が特定できるのが時代だ。
 主にナリキリ派であったぼくは、鉄砲を手にすれば『ララミー牧場』ゴッコ、『少年探偵団』ゴッコに熱中していた。しかし何といっても一番100連発が似合うのは、映画『多羅尾伴内』で片岡千恵蔵が見せる2丁拳銃だ。60円あればジャイアントコルトを買わずに迷わずキングコルトを2丁買う。これでユンファ撃ちならぬ伴内撃ちを思いっきり楽しんだのである。ただし巻き玉は節約しながら。
 やがて、昭和30年代後半に入ると、玩具はブリキの時代からプラスチックの時代へと突入する。玩具鉄砲の世界では、それは次なる王者・銀玉鉄砲の登場への大いなる布石であった。
 ということで、次回はこの銀玉鉄砲について、またおつきあいください。

※キャプション中の銃の全長は、銃口からグリップ終端までの長さです。

(「コンバットコミック」'94年4月号掲載)

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