『グロリア』(1980年アメリカ作品)

原題/GLORIA
監督・脚本/ジョン・カサヴェテス
主演/ジーナ・ローランズ、ジョン・アダムズ、バック・ヘンリー
カラーシネマスコープサイズ 121分
“組織”の秘密を握ったまま殺されたプエルトリコ人一家。その生き残りの6歳の少年を連れて、元ヤクザの中年女性グロリア(ローランズ)が、執拗に迫りくる“組織”と戦う。
 S&W M60リボルバーをガンガンぶっ放す“おばさん”の堂々とした戦いぶりが、公開当時かなり話題になった。
 個人的なことを言うと、この映画が公開された1980年ごろは、ぼくが出版社で仕事を始めたばかりで、ちょうど映画をあまり見なくなったころであり、この映画もリアルタイムでは見ていない。拳銃ファンのぼくとしては、それが残念でならないんだよねー。
 というのは、映画の中で、拳銃が記号的な力の象徴やファンタジーとしての武器ではなく、凶々しい“凶器”そのものとして描かれはじめたのがこの1980年代のことであり、この映画もそのハシリに名を連ねた1本だからである。つまり、ぼくはその歴史的出発点を見逃がしてしまったのである(涙)。
 80年代以降、ガン・アクション映画はどんどんリアルになっていく。この映画でも、自動拳銃の発射音の合間に、排出された薬筴が床に落ちる「チャリンチャリン」という音が聞こえる。今では当たり前の効果音になっているが、当時としてはリアリティにあふれた新しい演出効果であったはずだ。
 資料によれば、この映画に出演したときローランズは46歳。顔のシワをはっきり見せて「昔は凄かったけれど、いまは引退したおばさんヤクザ」という難しい役を見事に演じきっている。
 また、最初はほとんど無表情だった少年が、しだいに表情豊かになっていく過程も見事。カサヴェテス監督はこの幼い少年にどうやって演技指導をしたのだろう。もしかしたら、順撮り(ストーリーの順番通りに撮影してくこと)で本当に少年が心を開いていくところをそのままカメラに収めたのかもしれないな。まったくの推測だけど。

(1999/06/10)


※ブラウザの[戻る]または[Back]ボタンで戻ってください。