『次郎長三国志・次郎長売出す』 (1952年東宝作品)

監督/マキノ雅弘
主演/小堀明男、若山セツ子、田崎潤
白黒 82分
 村上元三の原作をマキノ雅弘が映画化したシリーズ全9作の第1作目である。演技、カメラワーク、カット割りなどあらゆる映画的要素がすべて歯切れよく作られていて、構図や役者の芝居のディティールよりも、映画全体のリズムを重視して演出したことがよくわかる。いわばライブ感覚であり、ずっと後にアメリカンニューシネマが試みた手法の原型のようにも見える。このダイナミックで現代的な表現技法と、時代劇という古風な容れ物の対比が、次郎長のざっくばらんなキャラクターを際立たせている。
 新米親分の次郎長(小堀)を始め、以後レギュラーとなる桶屋の鬼吉(田崎潤)も、侍をやめて次郎長の子分になる大政(河津)も、それぞれのキャラクターにピタリとはまっており、これ以外の配役は考えられない。まさに日本映画全盛期の役者の層の厚さを感じさせますね。
 個人的には、田崎潤が駆け出しのチンピラやくざを若々しく演じているのが興味深かった。田崎潤は、ぼくの世代だと、後の海底軍艦の艦長や連合艦隊の大将など、重厚な役を演じる人というイメージが強いけど、若いころの演技もメリハリが効いていてイイですね。年齢に応じて常に重要な脇役を演じ続けてきたことが分かります。ついでにもうひとり役者の話をすると、お蝶さん役の若山セツ子は、笑った顔がふ〜みん(細川ふみえ)にそっくりだな。

(1999/06/06)


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