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『頭文字D THE MOVIE』 (2005年 香港作品)


©1973 Les Films du Carrosse S.A.
監督/アンドリュー・ラウ、アラン・マック
脚本/フェリックス・チョン
原作/しげの秀一
出演/ジェイ・チョウ、鈴木杏、エディソン・チャン、ショーン・ユー アンソニー・ウォン、チャップマン・トウ、ケニー・ビー
カラー シネマスコープサイズ 107分
 しげの秀一が「ヤングマガジン」に連載中のマンガ『頭文字D』を、香港で実写版映画として製作されたもの。
 日本でこの手の映画(街道レーサーもの?)が製作されるというと、もう良くも悪くもVシネマ的な完成品のイメージがだいたい見えてしまうわけだけど、さて、それが香港だとどうなるのか、興味津々で見た。
 まず冒頭のシーン。これはきっと日本も香港も同じで、エンジン音をワンワン響かせながらドリフトするAE86トレノ(主人公・拓海の愛車)のイメージから入るんだろうなぁ……と思ったら、もうそこからして違っていた。
 オープニングカットは明け方の峠の静かな遠景。そこにかぶさるBGMも静かなもので、「おっ、これは(日本のVシネマとは)違うぞ」 と思わされ、期待感が盛り上がる。
 この映画は、車の走行シーンにはCGを使わず、車も走りも本物だが、それをあえて前面に出さないという作戦らしい。
 こうした半分車が主役という映画は、車に対して過度に思い入れると普通の観客が引いてしまうし、逆に少しでもリアリティを無視すると、メインの観客層となるはずのカーファン(走り屋?)からソッポを向かれてしまう。この微妙なさじ加減を監督が巧みに計算している様子が見て取れる。
 実際、広角レンズを多用してナメるように撮られた車はセクシーでかっこよく、スタート直前のシーンなどは文句なくワクワクしてくる。
 まー、だけどアレだ。ぼくの感想としては、やっぱり車の描写が物足りなかったかな、という感じだった。
 車をセクシーに描く映像表現は素晴らしい。その表現力を生かして、さらにバトルの部分や、走りのテクニックのディティールを詳細に描いていたら、これはもう自動車映画の傑作になっていたと思う。
 また、拓海(ジェイ)となつき(鈴木)との恋愛エピソードも、全体の構成の中で取って付けたたような感じでここだけ浮いていて、これによってバトルのハードな雰囲気が損なわれていたようにも思える。ここは女はズバッと省いちゃって、その分を主人公の内面や、対戦相手との心理戦などにもっと切り込んで欲しかったですね。

(2005/10/13)


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