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『ブラック・レイン』 (1989年 アメリカ作品)

原題/BLACK RAIN 監督/リドリー・スコット
製作/スタンリー・R・ジャッフェ、シェリー・ランシング
脚本/クレイグ・ボロティン、ウォーレン・ルイス
撮影/ヤン・デ・ボン
音楽/ハンス・ジマー
出演/マイケル・ダグラス、高倉健、アンディ・ガルシア、松田優作、ケイト・キャプショー、若山富三郎
カラー スタンダードサイズ 125分
 この映画、日本人には松田優作の遺作として記憶されていて、公開後10年以上たった今でも、話題にのぼることが多い作品であるにもかかわらず、ぼくは今回が初見である。
 リドリー・スコット監督の映画にはなぜかあまり食指が動かず、本作以外に見ているのは『ブレード・ランナー』(1982)のみ。あまりいい観客ではありません。
 ということで、作家性から見た評価はできないんだけど、全体的に描写がぎこちないことはわかる。
 映画の中でも、日本人とアメリカ人の考え方の違いによる衝突がたびたび描かれているが、恐らく、実際の撮影でもそうだったんでしょうね。
 ところで、この映画における本当の主役は、間違いなく松田優作である。そしてそのことについてはすでに多くの人が語っているので、ここであらためて言うまでもないので、ぼくは他の役者について書こう。
 この映画には松田優作の他にも何人もの日本人俳優が登場するが、そのキャスティングを見ていて、ぼくはある共通する傾向に気がついた。
 それは、彼(彼女)らが、演技の巧拙ではなく、日本的に言うと、どの役者も実に立派な面魂つらだましいを持っているということである。
 中でも神山繁が、実直で勤勉で融通の利かない大阪府警の上司を、アメリカ人向けに適度なデフォルメを加えつつ、それでいてさりげなく、堂々と演じているのが素晴らしかった。
 ストーリーはありきたりなもので、映像的にも見るべきとろこはあまり多くはなかったのだが、それでも全体的な緊張感が持続し、最後までそれなりに見させられてしまうのは、こうした“役者が揃った”映画だったからではないだろうか。
 因みに、柴又名画座では、数日前に今村昌平監督の『黒い雨』を上映した。この黒い雨というのは、原爆投下後に広島に降ったという死の灰を含んだ黒い雨のことを意味していたが、今回の映画の“ブラック・レイン”というのも、B29による空襲の後に降った黒い雨のことを指している。

(2001/09/10)


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